電子取引の取引情報の保存は結局猶予か

2021年12月15日

風景

電子帳簿保存法に関連した令和4年1月から適用の改正法のなかでも、すべての事業者に影響が及ぶ可能性があるのが電子取引にかかる取引情報を電磁的記録のまま保存しなければならないという部分です。
企業間のEDI取引だけではなく、今日の通信販売ではごく一般的となっている、ホームページを介してインターネット経由で取引を行う場合にもあてはまるところから、日頃インターネットを活用して商品の仕入れなどを行っている事業者であれば、すべて法の網にかかってしまいます。

保存にあたってもいろいろと条件があり、中小事業者にとっては難しいと感じるものがあります。その難しさは手続き的な煩雑さということもありますし、能力のある委託先を探すなり有料のクラウドサービスを利用するなりする必要があるため、予算的に厳しいという意味合いもあります。どちらにしても対応能力がある大企業のほうを向いて決まりごとを決めているのではないのかという批判を免れないものです。

国会での議決を経た法改正はたしかにあったとはいえ、肝心の事業者への周知はそれほど熱心に行われてきたとはいえず、施行直前のこの時期になって、にわかに全国から抗議の声が盛んになってきたというのが実情だろうと思います。もちろん大企業で時間がないなかで対応を勧めてきた各部署はあったでしょうし、その苦労は並大抵ではなかったはずです。
私のほうでもいちおうは法に抵触しない範囲内での最低限を満たすため、急ごしらえではありますが、正当な理由のない証憑類の削除及び改ざん防止のための規程を作成したり、経理処理にかかるシステム概要書を作成したり、パソコンやモニターなどの操作説明書を備え付けたりと、いくつかの作業を行ってようやく目処がつきました。売上が1千万未満のため、取引情報の検索可能な一覧の作成などは特に必要ありませんが、これもいざというときには対応できる程度のシステムは整備しておきました。

もう施行まで間がありませんが、ここで与党の自民党から税制改正大綱案が出されて、電子取引の取引情報を一律で電磁的記録オンリーとする縛りは、当面2年間の宥免措置が実施されることが決まったようです。すでに自民党の公式ホームページに大綱の全文がアップロードされていますので、たしかに記載がありました。このあと政府でも決定して省令改正があって、という段取りで勧めば、正式にこの宥免措置が実施されることになります。

この間の事業者の努力に水を差すようなはなしで、どのみち不満にあわせて猶予される結果が見通せていたのであれば、最初からそうしてもらいたかったというのが多くの事業者が怒りとともに考えているところでしょう。もちろん対応ができない中小の事業者では、この措置で救われたといったところもあるはずですが、どちらかといえばこのドタバタ劇に対しての国への失望感のほうが上回っているものと思います。

もっとも宥恕措置とはいっても、対応の遅れにやむを得ない理由があると税務署長が認めたとき限定のような書きぶりですので、単純だれもが認められるのではなく、申請なり届け出なり、また面倒な手続きが必要になるおそれがあります。結局は正式に決まらないとなんともいえない部分があり、まだまだ最新の報道に耳を傾ける必要がありそうです。

そもそも論として、電子帳簿保存法で電子証憑の直接保存を決めたことにはいろいろと問題があります。

たとえばインターネットを通じてとある企業から物品を購入したとして、もしもその領収証が紙で送られてきたのであれば、単純に今までどおりに所定の年数にわたって紙のまま保存していればよく、事業者の労力もたかが知れた話です。ところがPDFファイルのような電磁的記録としてメールに添付されるなどして送られてきた場合には、ひと手間も二手間もかかってしまいます。まずはメールごとダウンロードした上で、改ざんのおそれがないようにタイムスタンプを付する手間がかかりますし、保存するファイルの名前を相手方、日付、金額がわかるようにいちいち入力するか、台帳を別につくるなどして検索に堪えるようにしておかなければなりません。
このような手間をかける必要があるのであれば、むしろ相手方から紙で送付してもらったほうが経理処理は楽になるわけで、時代に逆行して紙全盛の時代となってしまうかもしれません。本来、電子帳簿保存法は電磁的記録の保存をしやすくするため、企業の内部事務を効率化してひいては国全体としての生産性のアップにもつなげようとする目的があったわけですが、これでは本末転倒の結果になりかねません。

また改ざん防止のためタイムスタンプを付したり、検索が容易な状態で保存するといったことは、事業者にとっての便宜ではなく、ひとえに税務署のつごうでひねり出された条件といえます。ここには事業者の目線はまったく含まれていないといってもよく、そうであるならば役所の側のほうがクラウドサーバーを用意したり各種帳票の雛形を提示したりといった準備をしておけばよいのに、すべて事業者の費用負担や手間の負担にゆだねてしまっているところは重大な問題です。電子帳簿保存法への内部対応もタダではできません。宥恕措置のある期間中にまともな対応を望みたいものです。

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